収録用語目録:マルチアクセス方式

札幌のアンテナ工事業者

用語説明

マルチアクセス方式
マルチアクセス方式の基本概念
マルチアクセス方式とは、複数のユーザーが限られた通信リソースを共有しながら、同時に通信を行うための技術です。これは、無線通信において非常に重要な技術であり、周波数帯域、時間、コード、空間など、さまざまなリソースを効率的に分配することで、複数のユーザーが干渉せずに通信できるようにします。マルチアクセス方式の発展は、携帯電話や無線LANなどのモバイル通信システムの普及に大きく貢献してきました。
マルチアクセス方式の種類
・周波数分割多重接続(FDMA: Frequency Division Multiple Access)
FDMAは、周波数帯域を複数のチャネルに分割し、各ユーザーに異なる周波数帯を割り当てる方式です。各チャネルは異なる周波数帯域を使用するため、ユーザー間の干渉が少なく、安定した通信が可能です。FDMAは、アナログの携帯電話システム(例えば、1G)で広く使用されてきましたが、帯域の利用効率が低いため、現在ではデジタル技術が主流となっています。
・時分割多重接続(TDMA: Time Division Multiple Access)
TDMAは、時間を複数のスロットに分割し、各ユーザーに異なる時間スロットを割り当てる方式です。これにより、同じ周波数帯を複数のユーザーが時間をずらして共有できます。TDMAは、2GのGSM(Global System for Mobile Communications)システムで広く採用されており、デジタル信号処理技術の進化により、より効率的な通信が可能となりました。
・コード分割多重接続(CDMA: Code Division Multiple Access)
CDMAは、各ユーザーに異なる符号(コード)を割り当て、全てのユーザーが同じ周波数帯と時間帯を共有しながら通信を行う方式です。符号分割の技術により、信号が重なっても特定のユーザーの信号を分離できるため、スペクトルの利用効率が高く、多くのユーザーを収容することが可能です。CDMAは、3Gシステムや一部の2Gシステムで広く使用され、移動体通信の発展に貢献しました。
・直交周波数分割多重接続(OFDMA: Orthogonal Frequency Division Multiple Access)
OFDMAは、FDMAの進化形であり、周波数帯をさらに細かいサブキャリアに分割し、これらを異なるユーザーに割り当てる方式です。サブキャリアが直交しているため、干渉を抑えつつ、同じ周波数帯を複数のユーザーが同時に利用できます。OFDMAは、4G(LTE)やWi-Fi(IEEE 802.11a/g/n/ac)などの最新の通信規格で採用されており、高速データ通信を実現しています。
・空間分割多重接続(SDMA: Space Division Multiple Access)
SDMAは、空間的に分離されたビームやアンテナを利用して、異なるユーザーに異なる空間チャネルを割り当てる方式です。複数のアンテナを使用して、特定のユーザーに向けたビームフォーミング技術を活用することで、干渉を最小限に抑えつつ、同じ周波数帯で複数のユーザーが同時に通信できます。SDMAは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術と密接に関連しており、5GやWi-Fi 6(802.11ax)などで利用されています。
マルチアクセス方式の応用例
携帯電話ネットワーク:
マルチアクセス方式は、携帯電話ネットワークの基盤技術です。例えば、2GのGSMではTDMAが、3GのWCDMAではCDMAが、4GのLTEではOFDMAがそれぞれ利用されており、それぞれの技術が世代ごとに進化しています。
・無線LAN(Wi-Fi): Wi-Fiは、家庭や企業内の無線ネットワークとして広く利用されており、OFDMAやSDMAの技術を組み合わせて、複数のユーザーが同時に快適な通信を行えるようにしています。最新のWi-Fi 6では、OFDMAが導入され、特に混雑した環境での通信効率が大幅に向上しています。
・衛星通信: 衛星通信においても、マルチアクセス方式が重要です。衛星は広範囲に信号を送信するため、多数の地上局が同時に通信を行う必要があります。ここでは、FDMAやTDMA、CDMAがよく利用されています。
マルチアクセス方式の課題と解決策
マルチアクセス方式にはいくつかの課題が伴います。例えば、FDMAやTDMAでは、周波数や時間スロットの割り当てに制限があるため、ユーザー数が増加すると、利用効率が低下する可能性があります。CDMAでは、すべてのユーザーが同じ周波数帯を利用するため、システム全体の干渉が問題となります。
これらの課題に対して、技術の進化により、以下のような解決策が提案されています。
・ダイナミックチャネル割り当て: リアルタイムで利用状況に応じてチャネルを動的に割り当てる技術。これにより、限られたリソースを効率的に利用でき、通信品質が向上します。
・先進的な符号化技術: CDMAの干渉問題を軽減するため、より高度な誤り訂正符号や符号分割技術が開発されており、これによりユーザー収容能力が向上しています。
・MIMO技術の活用: SDMAの一環として、MIMO技術が導入されています。これにより、同じ周波数帯を複数の空間ストリームで共有し、データ通信量が大幅に増加しています。
マルチアクセス方式の今後の展望
5Gや将来の6Gなど、次世代の通信システムにおいても、マルチアクセス方式は中心的な技術であり続けるでしょう。特に、OFDMAやSDMAをさらに進化させた技術が期待されています。また、IoTデバイスの急増に伴い、低消費電力で多数のデバイスを接続できる新しいマルチアクセス方式の開発が進んでいます。さらに、AIや機械学習を活用した動的なリソース管理技術が、将来の通信システムにおける重要な要素となる可能性があります。

マルチアクセス方式は、今後も通信インフラの発展とともに進化し続け、より効率的で信頼性の高い通信を実現するための鍵となるでしょう。