収録用語目録:無線周波数識別

札幌のアンテナ工事業者

用語説明

無線周波数識別(RFID)
1. 無線周波数識別(RFID)の概要
無線周波数識別(RFID: Radio Frequency Identification)は、電波を用いて物品や生物を非接触で識別する技術です。RFIDは、主に電子タグ(RFIDタグ)、アンテナ、リーダー(読み取り機)から構成され、これらのデバイス間で無線通信を行うことにより、データの送受信や物品の追跡、管理を行います。
RFIDは、バーコードやQRコードなどの光学識別技術と異なり、電波を用いるため、物体の視線上にある必要がなく、ラベルが見えない場所や汚れがついた状態でも情報を読み取ることが可能です。また、同時に複数のタグを一括で識別できるという特長があります。このため、物流や倉庫管理、小売業、医療、交通、セキュリティなど、幅広い分野で利用されています。
2. RFIDの動作原理
RFIDシステムは、主に以下の三つの要素から構成されます。
RFIDタグ
RFIDタグは、物品や生物に取り付けられる小型のデバイスで、ICチップとアンテナを内蔵しています。タグは、リーダーから送信される電波を受信し、内部のICチップに記録されたデータを電波に乗せてリーダーに返送します。タグには、以下のような種類があります。
・アクティブタグ: 電池を内蔵し、リーダーに対して自発的に信号を送ることができます。通信距離が長く、一般的に数十メートルから100メートル以上の距離で使用されます。
・パッシブタグ: 電池を持たず、リーダーからの電波を受けて動作します。通信距離は数センチから数メートル程度で、コストが低く、多くの用途で利用されています。
・セミアクティブタグ: 内 部に電池を持つが、通常は待機状態であり、リーダーからの信号を受け取ったときにのみ動作します。パッシブタグよりも長い通信距離を持ちつつ、電力消費を抑えることができます。
RFIDリーダー
RFIDリーダーは、タグからの電波を受信してデータを取得するデバイスです。リーダーは、アンテナを通じてタグに電波を送信し、その反射波からタグの情報を読み取ります。リーダーは、読み取ったデータを中央のデータベースや管理システムに送信します。リーダーには、ハンディタイプや据え置き型、ゲートタイプなど、用途に応じたさまざまな形状があります。
アンテナ
RFIDシステムでは、アンテナが重要な役割を果たします。アンテナは、リーダーから送信される電波を広範囲に拡散し、タグがその電波を受けるようにします。また、タグから返送された信号を受信し、それをリーダーに伝達します。アンテナの形状や設置場所、方向によって、RFIDシステムの通信範囲や性能が大きく影響されるため、アンテナ設計はRFIDシステムの重要な要素となります。
3. RFIDの周波数帯域と通信距離
RFIDは、使用する周波数帯域によって通信距離や特性が異なります。以下に主な周波数帯域とその特徴を示します。
低周波(LF)帯域:125 kHz~134 kHz
LF帯域のRFIDは、通信距離が短く、数センチから1メートル程度です。この帯域は、金属や水などの障害物に対しても比較的影響を受けにくく、動物の識別タグやアクセスコントロールなどの用途で広く利用されています。
高周波(HF)帯域:13.56 MHz
HF帯域のRFIDは、通信距離が数センチから1メートル程度で、近距離通信(NFC)にも使用されます。この帯域は、標準化された規格が多く存在し、電子決済や図書館の書籍管理、パスポートのICチップなどで利用されています。
超高周波(UHF)帯域:860 MHz~960 MHz
UHF帯域のRFIDは、通信距離が数メートルから10メートル以上に及び、広範囲での利用が可能です。この帯域は、タグの小型化が可能であり、大量の物品を一括して識別できるため、物流や倉庫管理、商品のトラッキングに適しています。日本では、UHF帯域の周波数として920 MHz帯が主に利用されています。
マイクロ波帯域:2.45 GHz以上
マイクロ波帯域のRFIDは、通信距離が長く、高速なデータ転送が可能です。しかし、金属や水分の影響を受けやすく、屋内での利用が主となります。交通システムのETC(電子料金収受システム)や長距離通信を要する特殊な用途で使用されています。
4. RFIDの利用分野と事例
RFIDは、その柔軟性と効率性から、さまざまな分野で広く利用されています。以下に代表的な利用分野と具体的な事例を示します。
物流・在庫管理
物流業界では、RFIDを用いた在庫管理や商品のトラッキングが一般的です。RFIDタグを商品に取り付けることで、倉庫内のどこに物品があるのかをリアルタイムで把握でき、入出庫作業の効率化が図れます。大手企業では、RFIDを導入することで、在庫管理の精度が向上し、欠品や過剰在庫の問題が大幅に削減されました。
小売業
小売業界でもRFIDの利用が進んでいます。RFIDタグを商品に取り付けることで、店舗内の商品の場所を迅速に確認できるほか、レジでの決済をスムーズに行うことができます。大手アパレルチェーンでは、RFIDを活用した自動在庫管理システムを導入し、売り場での欠品を防ぐとともに、販売データのリアルタイム分析を実現しています。
医療
医療分野では、RFIDを用いて医薬品や医療機器の管理、患者のトラッキングが行われています。RFIDタグを使用することで、医薬品の使用期限や在庫状況を正確に把握でき、患者の安全を確保することができます。さらに、病院内での患者の移動をトラッキングし、誤認防止や迅速な医療サービス提供に役立てています。
交通・セキュリティ
RFIDは交通システムやセキュリティ分野でも活用されています。たとえば、ETCシステムでは、車両に取り付けられたRFIDタグを用いて、料金所を無線で通過する際に自動で料金を支払うことができます。また、RFIDを用いたアクセスコントロールシステムは、建物や施設への入退室管理を行い、セキュリティを強化します。
5. RFIDの今後の展望
RFID技術は、IoT(モノのインターネット)と連携することで、さらなる進化が期待されています。IoTデバイスが増加する中で、RFIDタグを通じてリアルタイムでデータを取得し、効率的な管理や分析が可能となるでしょう。
また、RFIDタグの小型化や低コスト化が進むことで、より多くの物品にタグを付けることが可能となり、利用範囲が広がると予想されます。将来的には、RFIDと他の技術(例えば、GPSやセンサー技術)を組み合わせた新しいソリューションが登場し、さらなる効率化や精度向上が図られるでしょう。